『傷の跡』
おかえりなさい
待っているのはいつも貴方。
安心したような顔で、でも一緒に行けなかったことに少し不機嫌な貴方。
ただいま
孫権様の後ろからいつも、私はそんな貴方を見ていた。
貴方は私を見ていないはずだけど……
綺麗な人だと思った。
泣いたり、笑ったり、ころころ表情を変えて、
人間らしく生きている気がして、
綺麗だと思った。
自分には出来ないことだ。
感情なんて、とうの昔に捨てた。
そうしなければ、生きていけない気がした。
男だから。
いや、本当はもっと、違う理由。
貴方が見せる笑顔が、自分に向けられていないから。
感情を捨てれば、傷つくことはないから。
ほら、
痛くない。
痛くないだろう?
貴方の笑顔が孫権様に向けられていても。
「周泰、また傷が増えたんじゃない?」
え?
貴方の顔が近くにある……
貴方の眼に私が映っている……
これは幻…?
「ほら、ここ、前はなかったじゃない。」
いや、幻ではない。
温かい手が私に触れた。
貴方の小さな手。
傷に触れて、少し痛む。
嘘。
嘘だろう?
嘘みたいだ。
感情は捨てたはずなのに。
この気持ちは……。
「周泰、顔が赤いぞ。」
「なっ…!!」
にやにやと笑う孫権様に、つられて笑う貴方。
綺麗だ。
それに、
嬉しい。
ああ、
拾ってしまったのか。
捨てたはずの感情を。
傷。
こんな気持ちになるのなら、傷ついてもいいか。
*お題を見て最初に思いついたのがこれでした。「傷の跡」。まんまだな、自分。今回書いてみて、泰尚に目覚めたかも…。すごく楽しかった!難しかったけど…。文章もっと巧く書けるようになりたいです。でも、楽しかった!(しつこい)ちなみに私は泰権より権泰派です。