『どうしても行くのか』
好きな女が結婚した。
勿論、俺と、ではない。
劉備。
人徳とか言われているが、腹の内では何考えているかわからない、いけ好かねえ野郎だ。
政略結婚って言われてるけど、どうだろうな。
案外、お互い好きなんじゃねえの?
だってよ、ほら、
壁があるんだ。
俺が入れねえ壁がよ。
つい、この前まではあいつのこと全部知ってるつもりだったのによ。
壁があって、
あいつが見えなくて、
あいつが消えてしまいそうに思えてくる。
全く、俺らの大将も余計なことしてくれたぜ。
冗談じゃねえ。
あいつのこと一番知っているのは俺でいたかったのに。
だってあいつ、俺のこと結構好きだったんじゃねえ?
いや、俺の勝手な思いこみかもしれねえけどよ。
何か、いつも「稽古つけて」とか、他にも事あるごとに俺の所来ていたし。
結婚のことは教えてくれなかったが、
まあ、それは俺のこと好きだから。
とか?
かっこわりぃ
かっこわりぃな、俺。
でもよ、
俺、他の呉の連中よりはあいつのこと知ってるんだぜ。
あいつが何をしようとしているのか。
ばればれだ。
「やっぱり、来ると思ったぜ。」
「甘寧!」
そんな眼で見るなよ。
わかってる。
劉備の“居場所”に行くんだろう?
「ごめん…。行かせて……。」
そんな震えた手で武器を構えなくても、
わかってる。
わかってるから。
「どうしても行くのか?」
ああ、
いつもの眼だ。
強い意志を持った、
俺が惚れた眼。
「うん」
小さな返事の後に、あいつは小さな声でありがとうと言った。
そして、あいつは消えていく。
俺の視界から。
俺の世界から。
でもよ、
もし、
もしも、だ。
あいつが帰ってきたら、
一つだけ我が儘やっていいか?
俺、あいつのこと、ぎゅっと抱きしめて
「おかえり」って言いたい。
道譲ったんだから、それくらいいいよな?
:実は本命CPの甘尚でした。甘寧大好き人間なのですが、書けなくて少ないんです。これから増えるといいな。